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アパート・マンション賃貸経営の仕訳と青色確定申告

アパート・マンション賃貸経営の会計処理には、不動産賃貸経営に特有の仕訳ルールがあります。そして、アパート・マンション賃貸経営の青色確定申告には会計ソフトを利用した会計処理を行います。

ここでは、アパート・マンションを賃貸経営する大家さんの、会計ソフト入力を手助けする、不動産賃貸経営で用いる仕訳、会計を実例で説明します。また、アパート・マンション賃貸経営の青色確定申告についても説明します。

なお、本ページは、個人事業主用として作成してあります。法人の賃貸経営には、一部利用できない内容があります。

仕訳

不動産賃貸の場面に応じて利用する仕訳を、仕訳例を用いてまとめてあります。 仕訳表

なお、現金、普通預金を、「現金・預金」として記述しています。現金で授受する場合は「現金」に、銀行振込を利用する場合は「普通預金」に置き換えてください。

1. 入居時の仕訳

1.1 不動産屋さんにて、入居人が支払った賃料、礼金、敷金から、手数料が引かれて、大家さんの銀行口座に振り込まれます。不動産屋さんより頂いた内訳書を用いて、賃貸料、礼金、敷金、手数料の金額を明確にしましょう。

賃貸料:7万円、礼金:1ヶ月、敷金:2ヶ月、手数料:7万円であった。  〔借方〕現金・預金 70,000 /〔貸方〕賃貸料 70,000  〔借方〕現金・預金 70,000 /〔貸方〕礼金 70,000  〔借方〕現金・預金 140,000 /〔貸方〕預かり敷金 140,000 ←敷金は、負債(預り金)に仕訳されます。  〔借方〕支払い手数料 70,000 /〔貸方〕現金・預金 70,000

1.2  敷金の代わりに、入居時にクリーニング費用を領収した場合です。退去時に一部分でも返還するとの契約がある場合を除き、雑収入として仕訳します。

賃貸料:4万円、クリーニング費用:3万円、手数料:4万円であった。  〔借方〕現金・預金 40,000 /〔貸方〕賃貸料 40,000  〔借方〕現金・預金 30,000 /〔貸方〕雑収入 30,000  〔借方〕支払い手数料 40,000 /〔貸方〕現金・預金 40,000

1.3 不動産屋さんによっては、手数料を用いず、入居時の保険料、広告宣伝費とする不動産屋さんもあります。その場合、以下のように仕訳します。

入居時の保険料が7万円だった。  〔借方〕支払保険料 70,000 /〔貸方〕現金・預金 70,000

広告宣伝費が7万円だった。  〔借方〕広告宣伝費 70,000 /〔貸方〕現金・預金 70,000

いずれにしても、経費として処理されます。なお、確定申告の確証のために、手数料、保険料、広告宣伝費の受領書は、必ずもらいましょう。

2. 退去時の仕訳

退去時に、敷金から、修繕費(原状回復費)分担分、未払いの賃貸料を差し引いて、残りを退去人に返金します。

ここで注意が必要なのは、「敷金で修繕費を直接払う仕訳」はできません。

できない仕訳の2例:敷金7万円を、修繕費とした。 〔借方〕修繕費 70,000 /〔貸方〕預かり敷金 70,000 →預かり敷金のトータル金額が更に増えてしまいます。 〔借方〕預かり敷金 70,000 /〔貸方〕修繕費 70,000 →修繕費のトータル金額が減ってしまいます。

敷金は負債ですので雑収入(収益)を利用し、「修繕費の退去人分担分を、預かり敷金より雑収入として受領した。」として仕訳します。そして修繕費は別途、現金・預金より支出します。

預かり敷金7万円を、修繕費とした。  〔借方〕預り敷金 70,000 /〔貸方〕雑収入 70,000  〔借方〕修繕費 70,000 /〔貸方〕現金・預金 70,000

預かり敷金10万円の内、7万円を修繕費として差し引き、残りの預かり敷金3万円を退去人に返金した。修繕費は15万円だった。  〔借方〕預り敷金 70,000 /〔貸方〕雑収入 70,000  〔借方〕預り敷金 30,000 /〔貸方〕現金・預金 30,000  〔借方〕修繕費 150,000 /〔貸方〕現金・預金 150,000

修繕費15万円を、預かり敷金全額10万円に加え、退去人に5万円負担してもらった。  〔借方〕預り敷金 100,000 /〔貸方〕雑収入 100,000  〔借方〕現金・預金 50,000 /〔貸方〕雑収入 50,000  〔借方〕修繕費 150,000 /〔貸方〕現金・預金 150,000

預かり敷金10万円の内、3万円を退去月の家賃に充当し、残りの7万円を退去人に返金した。  〔借方〕預り敷金 30,000 /〔貸方〕賃貸料 30,000  〔借方〕預り敷金 70,000 /〔貸方〕現金・預金 70,000

預かり敷金10万円の内、3万円を修繕費として差し引き、4万円を退去月の家賃に充当し、残りの3万円を退去人に返金した。 修繕費は10万円だった。  〔借方〕預り敷金 30,000 /〔貸方〕雑収入 30,000  〔借方〕預り敷金 40,000 /〔貸方〕賃貸料 40,000  〔借方〕預り敷金 30,000 /〔貸方〕現金・預金 30,000  〔借方〕修繕費 100,000 /〔貸方〕現金・預金 100,000

過去に計上された未収賃貸料に、預かり敷金を充当する仕訳は、賃貸料を未収賃貸料に置き換えます。

3. 賃貸料の未入金

賃貸料が払われなかった場合、未収賃貸料で仕訳します。

賃貸料7万円が払われなかった。  〔借方〕未収賃貸料 70,000 /〔貸方〕賃貸料 70,000

未収賃貸料で計上していた、先々月の賃貸料7万円が支払われた。  〔借方〕現金・預金 70,000 /〔貸方〕未収賃貸料 70,000

4. 税金の納付

固定資産税・都市計画税、個人事業税、印紙代は、租税公課として仕訳し、経費処理できます。それ以外の税(所得税、住民税)は計上できません。

固定資産税・都市計画税を20万円納付した。  〔借方〕租税公課 200,000 /〔貸方〕現金・預金 200,000

5. 管理会社の集金代行

管理会社からの賃貸料の入金は、1ヶ月遅れとなります。しかし、集金を委託(集金を代行)しているのですから、管理会社の集金日が賃貸料の入金日となります。

集金された賃貸料から、管理会社の委託費用が差し引かれて入金されますので、賃貸料を元に戻し、委託費用を分離します。委託費用は外注費として仕訳します。なお、確定申告の確証のために委託費用の受領書は、必ずもらいましょう。

賃貸料20万円を受領し、管理会社への委託費用は2万円だった。  〔借方〕現金・預金 200,000 /〔貸方〕賃貸料 200,000  〔借方〕外注費 20,000 /〔貸方〕現金・預金 20,000

6. 修繕費、建物

6.1 クロス貼り替え、電球交換、換気扇交換、清掃・クリーニング等の原状回復費用は、修繕費で仕訳します。

クロス貼り替えに20万円支払った。  〔借方〕修繕費 200,000 /〔貸方〕現金・預金 200,000

6.2 増築、防音工事等の、建物に構造・機能が増える工事の費用は、建物(または、建物附属設備)で仕訳します。国税庁の定める耐用年数により減価償却します。
(国税庁の減価償却関連ページ: http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2100.htm)

防音工事に40万円支払った。  〔借方〕建物 400,000 /〔貸方〕現金・預金 400,000

7. 消耗品、工具器具備品

7.1 10万円未満の事務用品、工具等は、消耗品で仕訳します。なお、7.2の工具器具備品としても仕訳可能です。

3千円のプリンタ用紙を購入した。  〔借方〕消耗品 3,000 /〔貸方〕現金・預金 3,000

7.2 10万円から20万円未満の事務用品、工具等は、工具器具備品で仕訳します。1年分をまとめて一括償却資産として、3年で減価償却します。

14万円の管理用パソコンを購入した。  〔借方〕工具器具備品 140,000 /〔貸方〕現金・預金 140,000

青色確定申告 所得税青色申告決算書(不動産所得用)

青色確定申告に添付する緑色の所得税青色申告決算書(不動産所得用)は、アパート・マンション経営の収入金額を求め、そこから必要経費、青色申告特別控除を控除した所得金額を、決定する内訳書です。

所得税青色申告決算書(不動産所得用)の作成時の、チェック項目とサジェスト項目をまとめました。2月初旬の作成時期に合わせた日付設定となっています。

1. 整合性の確保

賃貸料/礼金/更新料等の収入金額は、会計ソフトから自動出力される1ページ目の金額と、手入力で出力させる2ページ目の収入内訳一覧の合計金額と一致させます。

2. 賃貸契約期間と収入金額期間のズレ

昨年の1月に支払われた賃貸料は2月分の賃貸料で、昨年の12月に支払われた賃貸料は今年の1月分の賃貸料ですので、賃貸契約期間は昨年の2月から今年の1月の期間となります。

・収入金額については、昨年中(昨年1月1日から12月31日)の収入金額を記載します。
・賃貸契約期間は、昨年2月1日から今年1月31日の期間とします。

3. 支払いが遅れた場合、未払いの場合

所得税青色申告決算書(2ページ目)を見るとわかりますが、賃料の支払い遅れや未払いを記述する欄はありません。確定申告では、賃貸料が支払われたものとして収入を計算します。会計では、未収賃貸料で仕訳し、資産として残っています。

「商品を送ったのにお金が支払われない。」「工事代金が支払われない。」と、同類で、商売をやっていく上で、最も難関な事項です。まずは、入居人にじっくりと話を聞いてみましょう。次の手はその後です。

4. 必要経費項目

1ページ目の損益計算書の必要経費欄には、支払い手数料、広告宣伝費、外注費の記述がありません。従い、これらの費用は、その他の経費に合算となってしまいます。

その他の経費の金額が大きい場合は、支払い手数料、広告宣伝費、外注費の中から金額が大きい項目を選び、必要経費の空欄に記載して単独に計上しましょう。